惜しくも亡くなられた神田武幸さんが監督をなされていたガンダムです。一年戦争を一兵士の視点でリアルに描いた作品で、ガンダムの中では私は一番好きです。地球上では大気の影響で光線兵器は効果が薄いことを考慮してか実体弾を使っているところやモビルスーツ以外の援護車両などが活躍するところなど、今までのガンダムと違って「戦争」を感じさせますね。
頼りなさげな風貌ながらも実は実戦経験があるらしい連邦軍のシローは地球に配属され、第08小隊の隊長となります。地球に降りる寸前、彼は複数のザクに襲われているジムを見つけます。彼はシャトルの艇長を説得、旧式のボールを駆り出してジムの救援に向かいます。真っ正面から戦っても勝ち目がないことを知っているシローは計略を使ってザクをワイヤで絡めますが、双方の機体は損傷。脱出したシローは敵のパイロットとともに爆風に飛ばされ、廃棄された戦闘艦に流れ着くのでした。
敵のパイロットに撃たれるシローでしたが敵が女性だということを知り、捕虜にすべく飛び掛かります。
「こんな時に殺し合いなんかやってる場合か!早く脱出するほうが先だろうが!」
弾が尽きて死を覚悟していたジオンの女性士官は驚き、次第に心を通わすようになります。酸素の残量も少ない中、彼らは生き延びるために敵味方の境界を越えて協力することになるのでした。
ずっとリリースが止まっていてファンをやきもきさせていた作品ですが、この夏に第10巻も出て一安心。神田監督が亡くなったためにプロットがないという噂もありましたが、どうやらある程度は出来ているようです。『バイファム』や『ガラット』を作られた神田監督のためにもきちんと完結させてほしいものです。
と思っていましたが、この度11巻で目出度く完結致しました。しかしながらその出来については私はいささか不満をもっています。やはり神田監督の不在は決定的でした。「戦争」を描いていたドラマがいつのまにやら単なるラブコメになってしまったように感じます。初期には実にこだわって描かれていた戦闘シーンも、11巻では大出力レーザーにかすめられた人間が平気で生きていたり(超高熱とイオン化した空気の中で生きているわけがないでしょ)、平気で大気圏内でビーム兵器を使ったりして(空気と水蒸気とでかなり拡散すると思うんですが…)随分とトーンダウンした印象を受けました。羊頭狗肉とまでは言いませんが、ちょっと残念でしたねぇ。物語としては悪くないんですが、戦闘描写があれでは……。ただしグフは最高です。
人の山田様が見てる
凉武装商隊 since 1998/5/19 (counter set:2004/4/18)